ゲッタァアビィーーーーーム

不可能に挑んだ男がいた。その名を高島肇氏という。物理法則を無視し、様々に形を変える存在不可能な奇跡のメカを、現実にまで引きずり下ろした漢である。まず一つ、10年の時を経て、すべてを制覇した。そして、その夢を皆と分かつべく、無謀とも思われる量産化に着手したのである。
スタジオ・ハーフ・アイの「完全変型ゲッターロボ」は、1999年というある意味もっともふさわしい年に、そのベールを脱いだ。誰もが不可能と思っていた合体が現実になる、その衝撃はまさしく業界を震撼させたと言って良いだろう。差し替えは一切無し、一体46000円(税抜)1000体限定と銘打たれたそれに、高すぎて買えないという声はあっても、値段に見合うだけの価値があるか否かを疑問視する声はなかった。1999年新春に第一次の予約受付、そして初夏に第二次の受付を行い、それが現実の物として人々の手に渡り始めるのは秋頃のことであった。
さて、前置きはこれぐらいにして、いかにして奇跡を現したかを見ていこう。
ゲットマシン


ご覧のように、イーグル号はかなり作品中でのデザインに近く、ジャガー号もそれなりの印象になっているが、ベアー号だけは他の2機ともかけ離れた独特の形状になっている。敢えて言うなら、変型のためのしわ寄せがかなりの部分ベアー号に集まっているというわけである。しかし、3機とも後部に推進ノズルが来るようにデザインされており、デザインに手を加えても、手を加えた中でちゃんと筋を通そうという意志が見て取れる。
写真で機体に黒い点がいくつも見えると思うが、これらはネジが通っている穴である。各機体のパーツはそのほとんどがネジ止めで連結され、ネジを軸にして各部が変型するわけである。ネジ止めの強度がそのまま関節の保持力となるため、ネジの締め方を微調整するためにドライバーが最初からセットされている。
材質はレジンキャストだが、樹脂自体が最初から色分けされており、塗装の必要は全くない。コックピット部分も透明の樹脂で作られている。各ロボットの目、ジャガー号の三角、そしてゲッター1のスネの赤ラインにシールを貼ってやる必要があるぐらいである。
ゲッター1

比較対象として、やはり3種に合体可能なゲッターロボ號を並べてみた。元来旧ゲッターロボの方が無理のあるデザインなのにも関わらず、プロポーション的にははるかに説得力のある物となっているのが見ていただけると思う。號では翔の機体を丸ごと背中に背負っているのに対し、3機が3機ちゃんとボディの一部を構成しているゲッター1の方がどれだけ高度で複雑な構造か、一目瞭然であろう。ゲッターの顔デザインは、当初発表された物ではアニメ版フェイスであったが、発売までに各部を改修する過程で原作版フェイスに変えられている。個人的にはアニメ版フェイスの方が好きだったので、できればコンパチにして欲しかったところではある。



ご覧のようにゲッタートマホークを構えたり、ゲッタービーム発射状態(トップ画像参照)を表現し、さらに関節がかなり自在に動いてかなり動きに表情を付けることができる。ゲッタートマホークには、背中が重くなって立ちにくいゲッター1を安定させるためのバランサーという役割もある。イーグル号の下部(ゲッター2の脚になる)が複雑に展開してゲッターウイングを構成している。指はトマホークを握れるように、
4本の指と親指とがそれぞれ動くようになっている。手のひらには、トマホークを固定するためのポッチがある。コブシの付け根にはボールジョイントが入っていて、かなり自在に動かせる。
これが合体前のパーツ状態である。少し写真が暗くてわかりにくいが、ツノの部分が畳まれた状態なのはおわかりと思う。ジャガー号のキャタピラが背中側にまわる以外には、構造的な破綻もほとんど無い。また、ジャガー号の装甲が順々に折り畳まれてゲッター1の腕になるシステムは、見事と言うほか無い。

写真ではわかりにくいかと思うが、各機体はそれぞれに備わった2本のシャフトと一対の穴とを組み合わせて接続する。ロックする機構は存在しないので、合体後に持ち上げたりする場合には気を付ける必要がある。
ゲッター2

ゲッター2とゲッター翔では、いずれもゲッター1(號)の脚部を背中に背負うという共通点を見るが、2機でロボットを構成して残る1機は背中という翔とくらべ、やはりゲッター2は3機ともボディの一部を構成する構造となっている。(さすがにベアー号の重要度は低いが。)



さすがに背中が重そうだが、ゲッター2独特の細くて長身のプロポーションや両腕の
アームとドリル等の特徴がよく表現されている。頭部のデザインはやはり原作風だ。胸から腰にかけての形状には苦心の跡が見られ、試作版から商品版までの間にも変更された部分がある。もちろん腕と脚は自在に可動する。脚は細身ながら非常に複雑な構造となっており、それでいて重い上体を支えて自立するだけの強度とバランスをもキープしているのはさすがと言えよう。
パーツ状態。イーグル号の見事に変型した形状、特にウイングがおり畳まれて足を構成している様子がよくわかると思う。ジャガー号とベアー号の合体は少々特殊で、単に差し込むだけの他のジョイントとは違い、ジャガー号のキャタピラの内側にあるシャフトでベアー号を両側からはさむという形になる。また、ゲッター1の腕がキャタピラの中にすっぽりと覆われ、無駄な空間を作らないように工夫されている。
ゲッター3

ゲッター3とゲッター剴は基本的には同じ様な構造だが、ゲッター3では大幅にアレンジされた肩の付け根以外にはそれほど破綻を来していないのに較べ、剴では號の脚部を丸ごと腕にしたり翔の脚パーツを脇に抱え込んだりと、合体ギミックのしわ寄せを一身に抱え込んでいる姿が泣かせる。もっとも、その豪快さが剴の魅力でもあるのだが。



実を言えば、ゲッター3もゲッター1の脚部をほぼそのまま腕にしているという点では同じである。ただ、大腿の部分をゲッターミサイルに見立て、膝から下の部分に腕パーツを収納してあるので、それほどバランスが崩れないのだ。ゲッター1の
脚の装甲を折り畳むと中から腕が現れるというギミックは秀逸かつ非常に複雑で、当初その構造がなかなか理解できずに非常に苦しんだ。この複雑な完全変型ゲッターの中でも、もっとも悩んだ部分であった。(つーか、いまだによくわかってないかも。)腕はご覧のように節の一つ一つがスライドして伸縮するという手間のかかった構造になっている。ただし、可動部は肩と手の付け根、それから指となっており、スライドする途中の節は曲げることはできない。
こうしてみると、ジャガー号に収納された
キャタピラがどれだけ巨大かわかっていただけると思う。他の形態では邪魔にしかならないキャタピラだが、ゲッター3のボリュームのあるボディを支えるためにはこのサイズが必要になるわけだ。そのため、各形態ではいかにキャタピラと他のパーツを噛み合わせてスペースを抑えるかに工夫が凝らされている。キャタピラに施されたトレッドパターンも非常に細かくリアルなものとなっている。
イーグル号とジャガー号の接続方法はおそらく設計段階でかなり悩んだものと推察する。イーグル号の下面とゲッター1の腕になるジャガー号の装甲の中にジョイントが備えられており、装甲を半分展開した状態でイーグル号と接続する。本来腕の変型にしか用いられないはずのギミックを他の合体にも活かすあたり、時間をかけてじっくり煮詰められたたまものであることが見て取れよう。
各形態にまったく無理がないとは言わない。完全に設定通りの変型をしているわけでもない。しかし、ゲッターロボは存在自体が無理の固まりなのである。元々物理的に嘘のある変型なのだから、例えばイーグル号の機首を倒して合体用の頭部を出したり、ベアー号の脚の中からゲッター3の腕が現れたりという嘘も、それはそれで有りだと思う。今世紀中には実現不可能とさえ言われたゲッターロボという大嘘に、正面からぶつかってこれだけの形にしてみせたことに対して、私は惜しみない賞賛を送りたいと思う。
20世紀に間に合ったのだから。
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