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 1988年、トランスフォーマーに前代未聞の新シリーズが登場した。その名はプリテンダー。機械の体に有機体、すなわち生身の鎧をまとった戦士たちだ。

 開始から数年を経て、トランスフォーマーは変形+αのアイデアを基本コンセプトとしていた。その過程でヘッドマスターやターゲットマスターなどが誕生したわけであるが、やがて全体にコストダウンが顕著になると、トランスフォーマー本来の魅力であるはずの変形をないがしろにしたアイデア勝負の傾向が強くなっていた。実際、この時期に発売されたアイテムで変形自体に重きを置いているのは、パワーマスター(日本名ゴッドマスター)やクイックスイッチ(シックスナイト)ぐらいのものである。一方、アメリカには昔から子供向け玩具として筋肉質のアクションフィギュア(といっても動くのはせいぜい腕ぐらい)が存在した。そして、(コストダウンされた)トランスフォーマーとアクションフィギュアの融合という、ある意味ビーストウォーズなどにも通じるコンセプトが全く違った形で実現されたのが、プリテンダーであったと言える。

 プリテンダーとは、変形可能なロボットがアクションフィギュアスタイルのアウターシェルの中に収納されているというものだ。中身のロボットは、もちろんシェルから取り出して遊ぶことが可能。プリテンダーは基本的にそのシェルの特徴によって、様々な種類に分類される。ただし、アウターシェルは大抵ずんぐりした造形であまりスマートとは言えず、本体ロボットもそれほど複雑な変形はしない。
 アメリカにおける設定では、中に収納されているロボットは一般的なトランスフォーマーで、バイオ技術によって合成したアウターシェルを装着している。アウターシェルを纏うことで、彼らはトランスフォーマーではなく人間や怪物などの「振りをする」事ができる。これが「プリテンダー」という名称の由来だ。だから、当初のプリテンダーのアウターシェルには、正体を隠すために各陣営のエンブレムは付いていなかった。(徐々にうやむやになってしまうが。)プリテンダーは、シェルを装着した状態では非常に高い防御力を誇り、分離したアウターシェルも独自に活動できるので、本体ロボットとアウターシェルによるダブル攻撃が可能というスーパートランスフォーマーなのだ。これらの設定の浸透には、当時刊行されていたマーベルコミックによるものが大きい。いささか無理のあるコンセプトを、ソフトウェアで魅力に変えてしまった功績は少なくはないと言えよう。また、バイオ技術を導入したトランスフォーマーという点で、ビーストウォーズの祖と言えるかも知れない。

 プリテンダーはアメリカでは好評を博し、翌年にも継続して発売されることとなった。しかし、日本での人気はさんざんで、数点が発売されただけで早々に展開は終了してしまう。やはり、精密指向の日本人にはプリテンダーの大雑把な変形は受け入れられず、さらに元々アクションフィギュアという文化がなかったことも災いしたのだろう。日本では、人間に変身するトランスフォーマーという、いまいち納得しにくい設定であったこともあるかも知れない。とはいえ、日本でしか発売されなかったプリテンダーや、プリテンダーの亜種もあるから気が抜けない。

 では、以下にそのラインナップを紹介していこうと思う。

プリテンダーUSA

1988年

PRETENDERS AUTOBOT I

 もっとも基本的なプリテンダー。プリテンダーにおいては、サイバトロンは基本的に人間、デストロンは怪物型を模している。特にこの3体は、造形に宇宙服や潜水服、飛行服を意識し、アウターシェルの中に人間の骨格が入っていても違和感のないプロポーションになっているのが特徴。(これら以外のものは人間の骨格を無視しているので、肩幅が広すぎる。)初期のプリテンダーは本体ロボットが収納を意識しているために、スマートで格好良い。アウターシェルが18p前後、本体が12p前後と比較的サイズも大きい。ただし、変形自体は手足を折り曲げただけのいささか説得力に欠けるものである。この3点はいずれも国内で発売された。

LANDMINE

WAVERIDER

CROUDBURST

 

PRETENDERS AUTOBOT II

 基本的には普通のプリテンダーであるが、アウターシェルのデザインに動物をモチーフとして取り込んでおり、それぞれ胸がライオンやワシ、サメを模している。そのため、一部では「プリテンダー戦隊」なんて陰口をたたかれることも。アウターシェルのプロポーションには、最初のシリーズほどのリアルさはない。なお、カタログ上ではプリテンダーI、IIの区別はないが、発売された時期やコンセプトに若干の隔たりがあるために分類させていただいた。

SKY HIGH

GROUNDBREAKER

SPLASHDOWN

 

PRETENDERS DECEPTICON I

 比較的ポピュラーな怪物であるバンパイア(コウモリ)、半魚人、ミノタウロス等をモチーフにしているのが特徴。とはいえ、その物ズバリのデザインというわけではない。アウターシェルの造形が非常に良くできており、怪物型のアクションフィギュアとして見ても十分なレベルである。日本でも発売された。

BOMB-BURST

SKULLGRIN

SUBMARAUDER

 

PRETENDERS DECEPTICON II

 ポピュラーな怪物ではなく、トカゲや昆虫、シーラカンス(?)などをモチーフにした獣人系のデザインが特徴である。そのため、ショッカー怪人などと言われることもあったりする。(ご丁寧にベルトまで巻いているし。)造形のレベルはIに引き続き高い。

IGUANUS

BUGLY

FINBACK

 

PRETENDER VEHICLES

 他のプリテンダーとは一線を画するシリーズ。なぜなら、すべてのプリテンダーの中で唯一、有機的なデザインを全く取り入れていないからである。アウターシェルは自動車型で、本体ロボットを収納するだけではなく、アウターシェル自体変形して本体ロボットの攻撃用移動砲台になる。本体ロボットの変形は普通のプリテンダーに近いが、サイズが一回り小さく、また部品がべらぼうに余ってしまうのも特徴。(余った部品はアウターシェルに付けておく。)

GUNRUNNER(AUTOBOT)

ROADGRABBER(DECEPTICON)

 

PRETENDER BEASTS

 その名の通り、動物型のプリテンダー。気分はビーストウォーズだが、デストロンも含めてすべてのキャラクターが哺乳類である。本体ロボットは、それぞれアウターシェルと同じタイプの動物に変形し、プリテンダービークルの本体ロボットよりもさらに一回り小さい。なお、いずれもアウターシェルの造形やプロポーションが素晴らしいが、デストロン側の方が毛皮などのモールドが細かくて若干優るように思う。本体ロボットの変形はぞんざい。

CATTILA(AUTOBOT)

CHAINCLAW(AUTOBOT)

SNARLER(DECEPTICON)

CARNIVAC(DECEPTICON)

 

1989年

PRETENDER FIGURES AUTOBOT

 基本的なプリテンダーのコンセプトを受け継ぐものであるが、アウターシェルのサイズが前年のものより小さく、本体ロボットはさらに小さい。本体ロボットは、アウターシェルの約半分から1/3程度の大きさしかない。また、プリテンダー独特の細身のプロポーションは捨ててしまい、脚や頭部をたたんでパーツを付けるだけという、さらに単純な変形に堕している。反面、アウターシェルのデザインは昨年より個性的になっており、ダブルヘッダーなど一度見たら忘れられないデザインと言えるだろう。

DOUBLEHEADER

PINCHER

LONGTOOTH

 

PRETENDER FIGURES DECEPTICON

 やはり本体ロボットは単純だが、デザインの個性的なことではサイバトロン以上。一体だけ人間型のものが混じっているが、実は発売前にサイバトロンとラインナップを一体交換したということである。そのため、サイバトロン側にも一体だけ獣人型のものが混じっているわけだ。なお、鎧を付けたドクロという強烈なデザインのブラジオンは、マーベルコミック版でリーダーとしてデストロン軍団を率いたことがある。

BLUDGEON

STRANGLEHOLD

OCTOPUNCH

 

PRETENDER CLASSICS

 昔の人気キャラクターをプリテンダーとしてよみがえらせようという趣向。最近でこそ懐かしい名前のキャラが続々登場しているが、実は昔のキャラクターを新しいコンセプトでリメイクするという企画は、パワーマスターオプティマスプライムを除けばこれが初めての試みであった。アウターシェルのサイズは昨年のプリテンダーとほぼ同じだが、本体ロボットは一回り以上小さい。(それでもこの年のPRETENDER FIGURESの物よりかなり以上大きいが。)一応もとのキャラクターと同じものに変形するが、サイズの都合上、以前よりもかなりシンプルなギミックとなっている。また、アウターシェルにエンブレムが付いているところをみると、正体を隠すという本来の意義は失われているようだ。

JAZZ(AUTOBOT)

BUMBLEBEE(AUTOBOT)

GRIMLOCK(AUTOBOT)

STARSCREAM(DECEPTICON)

 

MEGA PRETENDERS

 本体ロボットのみならず、アウターシェルもビークルモードに変形させるという新型プリテンダー。本体ロボットはそれなりに小型だが、造形やギミックは同年のプリテンダーの中では精密な方。ロボットを収納するだけではなく、ビークルモードでも本体とアウターシェルを連結して遊ぶことができる。が、生身の人間体であるアウターシェルが変形するのは、ちょっと気持ち悪い。

CROSSBLADES(AUTOBOT)

BROOM(AUTOBOT)

THUNDERWING(DECEPTICON)

 

ULTRA PRETENDERS

 メガプリテンダーとプリテンダービークルのコンセプトを併せ持つ、最強プリテンダー。アウターシェルは、本体ロボットを乗せるビークルモードに変形可能。さらに、そのアウターシェルを収納する大型のビークル型シェルを持つのである。また、ビークル型シェルを攻撃モードにして、本体ロボットを直接乗せることもできるのである。ただし、本体ロボットはメガプリテンダーのものよりもさらに小さい。

SKYHAMMER(AUTOBOT)

ROADBLOCK(DECEPTICON)

 

PRETENDER MONSTERS DECEPTICON

 怪物型のアウターシェルにシェルとよく似た怪物に変形する本体ロボットが収納されているが、本体ロボット6体を合体させると大型ロボットモンストラクター"MONSTRUCTOR"になる。デザインは格好良いが、いかんせん本体ロボット自体が小さいので(マイクロTFより一回り大きい程度)、6体合体してもホットロディマスぐらいの大きさしかない。合体用の余剰パーツは、アウターシェルの背中などに取り付けておくことができる。

SLOG

BIRDBRAIN

BRISTLEBACK

WILDFRY

SCOWL

ICEPICK

 

プリテンダーin日本

1988年

プリテンダー

 サイバトロンプリテンダー4体のうち、メタルホークは日本国内向けに製作された物。だからダイキャストパーツを使っているし、日本的なヒーローっぽいデザインを取り入れている。恐らく、プリテンダーを日本にスムーズに導入するための苦肉の策であったと思われるが、そのもくろみは成功したとは言い難い。また、日本では、プリテンダーは普段人間として生活していて、有事の際にはスーツをまとい戦闘モードに、さらに巨大化してロボットモードになるというウルトラマン的な設定であったが、トランスフォーマーの世界観の中では非常に浮いた存在であり、また玩具の魅力を十分に引き出す設定でもなかったことが悔やまれる。

ランダー(サ):海外名はLANDMINEで、日本に最初に上陸したプリテンダー。「謎のトランスフォーマー"ランダー"プレゼント」は、そのデザインのあまりのインパクトにファンの度肝を抜いた。(変形できるのかどうかすら謎だったし。)プレゼントキャンペーンをやった都合か、他のプリテンダーと同時には発売されなかったが、国内でも発売される予定はちゃんとあった。その証拠に、ちゃんと日本版パッケージが製作されている。が、この国内仕様の物は「TF劇場版」のチャリティー上映会、及びごく一部の店舗で販売されたのみで、一般市場には出なかった。当時タカラは「海外で大人気のために生産が追いつかない」と言い訳していたが、出しても売れそうにないからやめたってのが正直なところではないかと思う。(個人的な感想ですが。)

メタルホーク(サ):プリテンダー日本上陸にあたって新規に作られたキャラクター。ヒーロー的な色使いが目を引く。造形は他のプリテンダーよりもシャープだし、本体ロボットにはダイキャストまで使用しているが、いかんせんアウターシェル、本体共にプロポーションが悪く、他のプリテンダーと並べるとかえって見劣りする感がある。(特に、馬面の本体ロボットは最悪。)

フェニックス(サ):海外名はCLOUDBURST。

ダイバー(サ):海外名はWAVERIDER。

ブラッド(デ):海外名はBOMB-BURST。

ダウロス(デ):海外名はSKULLGRIN。

ギルマー(デ):海外名はSUBMARAUDER。

 

プリテンダー/ヘッドマスター

グランドマキシマス(サ):グランドマキシマスは、前年発売されて大好評だったフォートレスマキシマスの色を変えたもの。専用のアウターシェルを用意して、頭部のみを収納しプリテンダーとした。だが、いくら大人気だったからといって、同じ物を色だけ替えて次の年に発売しても売れるはずがないのであった。頭部のみとはいえプリテンダーの本体ロボットとしては最大であるため、アウターシェルもやはり人型のプリテンダーでは最大。

 

1989年

恐竜戦隊(デ)

 海外版同様デストロン。プリテンダーとはされていないが、恐竜サイボーグにロボットが収納されているという演出は、日本のプリテンダー以上に海外版のプリテンダーに近い。ただし、本体ロボットは劇中では一度も変形していない。本体ロボットはプリテンダーモンスターズの物を色だけ替えて使っているが、配色や全体の統一感でオリジナルに勝ると思う。恐竜サイボーグは、すべて新造形。もちろん、合体用余剰パーツはサイボーグに取り付けられる。

ゴウリュウ:本体の海外名はICEPICK。アウターシェルはティラノサウルス。リーダーのくせに、珍しくボディや頭部ではなく片足に変形する。

カクリュウ:本体の海外名はSLOG。アウターシェルはトリケラトプスである。中に入るロボットの都合上、トリケラトプスとしてはかなり太めの造形になっている。

ライリュウ:本体の海外名はBIRDBRAIN。アウターシェルはブロントサウルスである。

ヨクリュウ:本体の海外名はWILDFRY。アウターシェルはプテラノドンである。

ガイリュウ:本体の海外名はBRISTLEBACK。アウターシェルはアンキロサウルスである。

ドリュウ:本体の海外名はSCOWL。アウターシェルはステゴサウルスである。

ダイノキング:海外の名称はMONSTORUCTOR。ただし、海外では6体セットの販売はなかった。

 

クロスフォーマー(デ)

 メガプリテンダーを日本発売に合わせて改修した物。基本的なギミックは変わっていないが、一部のパーツを差し替えてアウターシェルまですべてロボットとした点が大きく異なる。3体とも発売の予定があったが、VROOMを改修したバイククロス(仮称)だけは発売が見送られた。なお、両者ともデストロンとして発売。

ブラックシャドー:海外名はTHUNDERWING。

ブルーバッカス:海外名はCLOSSBLADES。AUTOBOTからデストロンにコンバートされた。

 

ヒーローセット

 これ自体はプリテンダーでもなんでもない。実は、プリテンダークラシックスの本体ロボットのみを4体セットにして発売したのが、このヒーローセットなのである。ちなみに、アメリカ国内でも同様に本体ロボットのみを発売したことがある。(ただしばら売り。)

マイスター(サ)、バンブル(サ)、グリムロック(サ)、スタースクリーム(デ)

 

 プリテンダーのコンセプトは、形を変えて翌年のアクションマスターへと受け継がれることとなる。しかし、本来の魅力であるはずの「変形」を忘れたトランスフォーマーが失速し始めたのは、プリテンダーの登場に前後することは誰もが認めることであろう。タカラではさすがにこれらのコンセプトは日本では受け入れられないと判断したらしく、以降国内のトランスフォーマーは海外とは全く違った独自の路線を歩むことになるわけだが、ソフトウェア面での魅力を失った日本のトランスフォーマーもやはり衰退の道をたどっていくことになる。

 トランスフォーマーのひとつのターニングポイントとして、また他に類を見ない独創的なシリーズとして、プリテンダーたちのことを覚えておいていただければ幸いである。

 

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